浄土真宗本願寺派 光寿山 正宣寺

佐賀の巡番報恩講

 この3月、佐賀県で江戸時代から続く「巡番報恩講(じゅんばんほうおんこう)」と呼ばれる伝統ある法要に出講しました。3月12日と13日が昼・夜、14日は昼のみの計5座8席の法座でした。新型コロナウイルス感染対策のため、本堂の座席は間隔を広めにとっていましたが、それでも毎回たくさんの方がお聴聞(ちょうもん)にお集まりでした。法要に出勤する僧侶やお手伝いの仏教婦人会の方々は別室のモニター画面でお聴聞されていました。近隣寺院の坊守(ぼうもり)や門信徒も多くお参りされており、各寺院から車を出して、巡番報恩講がお勤めされている寺院へ参拝者を運んでいる様子も見られました。

 巡番報恩講は、各寺院の報恩講とは別に、()や数か寺ずつが1つのグループとなり、順番に寺院で法要を3日間か7日間に渡って勤められます。グループの寺院数によって違いはありますが、6年半から10年に1度まわってくる大法要です。法要にはグループ内外の僧侶や門信徒も一堂に集まり、盛大に勤められます。この数年に1度の当番に併せ、本堂などの改修や荘厳(しょうごん)の新調などを実施している寺院も多いと聞かせていただきました。寺院と門信徒の繋がりも深く、ご法義の繁盛、寺院の護持発展に繋がっている法要体制だということです。地域全体で法要を盛り上げている様子が、本当にありがたいご縁でした。

 このような法要を大阪で再構築することはとても難しいでしょう。正宣寺では、私どもの寺院でお勤めする法要だけをお知らせし、近隣寺院の法要のご案内はしておりません。また、昨年以降は新型コロナウイルスの影響により、各寺院では法座の休座や日程の短縮が増えています。感染拡大防止のためにはやむを得ないことかもしれませんが、収束後、元に戻るのかどうか心配です。これでは、参詣者が減るばかりです。地域の寺院が協力し合って、法要案内、お参りの推奨、住職や門信徒が「一緒にお参りに行きませんか」と声をかけ、法要や法座を盛り上げていけないものか、そんなことを考えるご縁でした。

 お聴聞の場は浄土真宗の(かなめ)です。その機会が減ることは、み教えに触れることがますますできなくなります。浄土真宗のみ教えは、一般の宗教とは逆といってよいでしょう。一般の宗教は、私の願いや望みを叶えてもらうために存在します。しかし浄土真宗は、阿弥陀(あみだ)さまが私の現実の姿をご覧になって、迷っていることも煩悩(ぼんのう)があることも知らず、苦悩の中に沈む私をどのように救い、どのようなお浄土に迎え入れ、どのような悟りの身にしようとされるのか聞いていくのです。お聴聞を通して、私という存在は大変危険なものであることに気づかされ、自分中心の考え方に制御をかけてくれるのが浄土真宗のみ教えなのです。

「南無阿弥陀仏」